高田馬場というキャッシングの聖地のような町で、私ははじめてのキャッシングを経験しました。
高田馬場の町を代表する景観と言えば、なんと言っても学生ローンの看板です。高田馬場は言わずと知れた早稲田大学の最寄り駅であり、近隣には他にも数多くの専門学校や予備校が居を構えています。石を投げれば学生に当たるような町ですから、学生ローンの看板が至るところに掲げられているのです。高田馬場には、ちょっと度が過ぎるんじゃないかと思うほど、学生ローンが密集しています。
ひょっとすると、高田馬場は日本でもっとも借金への敷居が低い町なのかもしれません。夥しい数の学生ローンの看板だけでなく、消費者金融各社の看板が負けじと自らの存在を顕示しています。借金は怖くない、そんな悪魔の囁きが街路のあちこちから聞こえてきそうな町なのです。実際、金に困った東京の学生は高田馬場の町に吸い寄せられるという言い伝えがありました。今のようにネットで審査の申し込みをするのが当たり前ではなかった時代、学生にとって最も気軽に借金の申し入れができる町、それが高田馬場だったのです。
そんな高田馬場で私がはじめての借金をしたのが10年前のハタチの頃でした。おぼえたてのギャンブルですっからかんになってしまった私は半べそをかきながらアコムのむじんくんに駆け込んだのです。罪悪感と緊張感でドキドキしながら自動契約機に個人情報を入力したときのことを今でもよく覚えています。審査の回答が出る少しばかりの時間を、ガクガク震えながら待ちました。なにせ、借入を断られたら最後、その日の夕食代すら捻出できぬ窮状だったのですから仕方ありません。程なくして審査の合格が伝えられた瞬間には、命拾いの安堵感が胸いっぱいに広がったものです。
先日、久しぶりに高田馬場に行きましたが、そこは相変わらず借金の誘惑が喧しい町でした。私が利用したむじんくんは今も健在ですし、町のあちこちに学生ローンの看板が掲げられています。時代は変われど、学生は今もこの町ではじめての借金を経験しているのかもしれません。